2.2 ポリマー構造の効果
次に,ポリマーの構造と相分離挙動の関係について考 えてみたい。ポリ(N-置換アクリルアミド)は置換数により一置換体,)と二置換体,)に大別することができるが,両者の重要な相違点は水
素結合ドナーとなるアミドプロトンの有無である。自ずとアミド基の水和も異なり,一置換体であるポリ(N-n-プロピルアクリルアミド)(PnPA)やポリ(N-シクロプロピルアクリルアミド)(PcPA)のamide IバンドはPiPAと同様に2成分からなるのに対して,二置換体であるPdEAやポリ(N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド)(PMiPA)のamide Iバンドは3成分からなり,高波数側から非水和のC=O基に帰属される成分,1分子の水と水素結合したC=O,2分子の水と水素結合したC=Oに帰属される(図3b)。このような,アミド基の相互作用の差は,相転移の鋭さやヒステリシスといった巨視的挙動の差に
反映される。すなわち,グロビュール状態でのポリマー間相互作用が強い一置換体では,降温時に転移の遅延が起こり昇温時よりTpが低くなる。また,一置換体は転移の過程で連鎖的に
ポリマー間水素結合が形成されるため,二置換体より協同性が高く狭い温度範囲で相分離が起る)。
図8 各種ポリ(N-置換アクリルアミド)の構造
図9 各種ポリ(N-置換アクリルアミド)の相分離挙動 |
図10 PiPAの相分離挙動とアミド基の水和
図11 PdEAの相分離挙動とアミド基の水和 |