生物応用化学演習U 625日(無機化学演習)課題

[1]1922年に,シュテルンとゲルラッハは角運動量の空間量子化を確かめる実験を行なった.彼らは,銀の原子線を不均一な磁場の中へ入射させた.シュテルンとゲルラッハの実験によって,スピン角運動量が存在することと,電子スピンは整数値ではなく,半整数の1/2であることが明らかとなった.シュテルンとゲルラッハの実験を図示して簡単に説明し,電子スピンが1/2であることを説明せよ.

[2]β-カロテンは直線形のポリエンで,22個の炭素原子鎖に沿って10個の単結合と11個の二重結合が交互に存在する.もし,各CC結合距離を約140pmにとると,β-カロテン中の分子の箱の長さLL=0.294nmとなる.各C原子はp電子1個をπ結合に与え,そしてこの分子の最低エネルギー状態においては,n=11までの各準位が2個の電子でしめられている.

問1.基底状態と電子1個がn=11からn=12に昇位した状態との間のエネルギー間隔ΔEを求めよ.

問2.ボーアの振動数条件(810式,ΔE=hν)から,この遷移を起こすに必要な電磁波の振動数を求めよ.

[3]気体水素を通して電気放電を行うとき,H2分子が解離してエネルギー的に励起されたH原子ができて,これは離散的な振動数の光を放出し,一連の線スペクトルを生じる.バルマー系列の最長波長の線の波長を計算せよ.

[4]5つのdオービタルはeg(dx2-y2,dz2)t2g(dxy,dyz,dzx)2つのグループに分けることができる.

問1.これら2つのグループに分かれる理由をそれぞれのdオービタル境界面の図を描いて説明せよ.

問2.自由原子または自由イオンの状態では5つのdオービタルは縮重しているが,正四面体四配位錯体(例えば,テトラクロロコバルト(II)イオン)や正八面体六配位錯体(例えば,ヘキサアココバルト(II)イオン)においては,縮重が解けてd-d遷移にともなう可視光の吸収が生じる.金属イオン自身(例えばコバルト(II)イオン)は無色であっても,遷移金属錯体は色が着いていることが多い理由を説明せよ.

[5]酸素分子が常磁性である理由を,基底状態における分子オービタルエネルギー準位図を描いて説明せよ.また,酸素分子の結合次数はいくらか.

演習レポート提出要領

(1)上記の)課題[1]〜[5]を解答して提出して下さい.用紙はA4版レポート用紙とする.複数枚にわたる場合は左上をホッチキスで止めて下さい.

(2)提出場所:工学部4号館304号室前

(3)提出〆切:6月23日(水)午後5時

6月25日演習担当:前田史郎